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エバーツ総領事寄稿文 神戸新聞「随想 ある天才発明家」

Rudolf Diesel (links), Erster Dieselmotor (rechts) / ルドルフ・ディーゼル(左)、世界初のディーゼルエンジン(右)

Rudolf Diesel (links), Erster Dieselmotor (rechts) / ルドルフ・ディーゼル(左)、世界初のディーゼルエンジン(右), © picture alliance / akg-images | akg-images

06.07.2021 - 記事


ドイツはエンジンとモーターの国だ。世界初の電気モーターもガソリンエンジンもドイツで生まれ、今でもドイツ人開発者の名を持つエンジンがある。その一つがディーゼルエンジンだ。開発者ルドルフ・ディーゼル(1858-1913)は、天才エンジニアにしてカリスマ的存在だった。


 彼は少年時代をパリやロンドンで過ごし、その後ドイツのアウグスブルクなどで学んだ。学生時代から並外れた創造性を発揮するだけでなく、人の心をつかむことに長けていた。それ故、困難な時期には必ず彼のプロジェクトの支援者が現れた。彼はよく困難にも直面した。発明家としては天才だったが、いかんせん実務に弱かった。銀行や取引先との交渉などは極めて苦手で、彼の持つ多数の特許の煩雑な手続きには苦労した。そのため生涯を通じて常に財政的、法的な問題と格闘し続けた。だから、最後には自殺したなどとうわさされるのだろう。


 実際、彼の最期は謎に包まれている。何度も英国に渡っていたが、1913年9月、連絡船上からこつぜんと姿を消したのだ。本当に自殺したのか? 何かの事故で船から落ちたのか? おそらくは事故だったのだろう。当時、彼は妻と3人の子と幸せに暮らしており、証人によると姿を消した日は上機嫌だったというのだから。


 ディーゼルエンジンは彼が遺した最も偉大な発明品だ。現代の技術で改良されたクリーンディーゼルの効率性やエコ度は、他のエンジンに比べて群を抜く。製造と寿命を計算に入れると、電気モーターよりもエコで、実用化に向け開発中の合成燃料を使えば、他の追随を許さない最高の気候ニュートラル装置となりうるのだ。


 そして、ディーゼルエンジンは日独関係にも重要な役割を果たしている。据え置き型ディーゼルエンジンの導入が、関西の数多くの中小企業の発展に貢献したのだ。

 

(神戸新聞2021年6月16日、夕刊「随想」に掲載)

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